アラビア語(アラビアご、;UNGEGN式:、アッ=ルガトゥル=アラビーヤ)とは、おもに西アジア(中東)・北アフリカのアラブ諸国で用いられ、世界の言語の中でも大変広い地域で話されている言語の一つ。また、国連の公用語においては、後から追加された唯一の言語である。
アフロ・アジア語族セム語派の一種である。漢字で亜語、あるいは亜と表記されることがある(中国語では阿)。ISO 639による言語コードは、2字がar、3字がaraで表される。イスラム教において、啓典「クルアーン」は神がアラビア語をもって人類に下したとされるため、公用語となっていない地域でも、アフリカから東南ヨーロッパ、インド、東南アジアにかけてのイスラーム世界では、知識人層の共通語として通用している。
概要
「アラビア語」とは、もともとはアラビア半島で話されていたいくつかの言語(例えば南アラビア語)を意味するが、現代では次の二つの大きく異なる言語をさす。
- 文語:フスハー(。正則アラビア語・現代標準アラビア語 (MSA) ともいう。古典北アラビア語を基盤とし、現代世界に対応する語彙語法を大きく加えたもの。)
- 口語:アーンミーヤ(フスハーから派生した各地の変種(ラハジャ)に分かれる。)
フスハーはアラブ諸国の共通語で、アラビア文字で書かれる。起源は西暦4世紀ごろのアラビア半島にさかのぼるといわれ、イスラーム文明の出現と拡大にともなって北アフリカにまで使用地域が広がり、現在まで言語として大きく変わらずに使われている。
イスラーム(イスラム教)の聖典である『クルアーン』(コーラン)はアラビア語で書かれているが、これはムハンマドの出身部族であったクライシュ族のアラビア語を反映しているため、当時のアラビア半島に見られた諸方言のうち、クライシュ族方言が標準語フスハーとしての地位を獲得するに至った。『クルアーン』の記述によれば、イスラームを伝えるために神が選んだのがアラビア語だったことから、ムスリム(イスラム教徒)はこれを聖なる「神の言葉」としてとらえている。
『マカーマート』<訳は平凡社東洋文庫全3巻>のような古典に見られるフスハーは一時期衰退し、アーンミーヤが専ら用いられるようになったが、フスハーは近代になってより簡単なものとして練り直され、書籍・雑誌・新聞などの文章はもちろん、公的な場での会話やテレビニュースなどでも使われるようになった。
一方、アーンミーヤは国・地域によって大きく異なる地域変種(ラハジャ)に分かれ、これには正字法が無い。アラブ人どうしの日常会話はアーンミーヤで話されることが多いが、私信などではこれを文字化して表現する。
湾岸方言、ヒジャーズ方言、イラク方言、シリア・レバノン方言、エジプト方言、スーダン方言、マグリブ方言などに大別され、それぞれの地域のなかでも違いがある。地域によっては、宗派ごとに話されるアラビア語に差異があるなどする。
現代アラブ世界でのフスハーとアーンミーヤの関係は、中世のキリスト教世界におけるラテン語とロマンス諸語の関係に酷似している。後者が前者から派生し、多くの変種に分かれていること。前者が日常語としては死語であるが、公的な話し言葉、書き言葉として通用し、後者は基本的に書かれることはまれであることが、その理由である。
なお、エジプト方言、シリア・レバノン方言などはマスメディアで多用されるためアラブ世界各地で理解される一方、異なる地域同士の住民では方言での会話に支障が出ることもある。また、多くの地域で死語とみなされるフスハーが日常会話で用いられることはほぼ皆無であり、読み書き・演説や報道番組での使用に限定される。従って、非ネイティヴが現地でスムーズな日常会話を
行うためには当地のアーンミーヤ(もしくはラハジャ)を修得する必要があり、読み書きも修得する場合にはフスハーと重ねて学習しなければならない。