ウイルス (virus) は、他の生物の細胞を利用して、自己を
複製させることのできる微小な構造体で、タンパク質の殻とその内部に詰め込まれた核酸からなる。ウィルス、ビールス、ヴィールス、バイラス、ヴァイラス、濾過性病原体、病毒と表記することもある。生命の最小単位である細胞をもたないので、生物学上は非生物とされている。
ファイル:Human_Immunodeficency_Virus_-_stylized_rendering.jpg|thumb|200px|right|HIVの模式図。
概要
ウイルスは細胞を構成単位としないが、遺伝子をもち他の生物の細胞を利用して増殖できるという、生物の特徴を持っている。現在でも自然科学は生物・生命の定義を
行うことができておらず、便宜的に、細胞を構成単位とし、代謝、増殖できるものを生物と呼んでおり、細胞をもたない
ウイルスは、非細胞性生物または非生物として位置づけられる。しかし、遺伝物質を持ち、生物の代謝系を利用して増殖する
ウイルスは生物と関連があることは明らかである。感染することで宿主の恒常性に影響を及ぼし、病原体としてふるまうことがある。
ウイルスを対象として研究する分野は
ウイルス学と呼ばれる。
ウイルスの起源にはいくつかの説があるが、トランスポゾンのような動く遺伝子をその起源とする説が有力である。
遺伝物質の違いから、大きくDNA
ウイルスとRNA
ウイルスに分けられる。詳細は
ウイルスの分類を参照。真核生物、真正細菌、古細菌、いずれの
ドメインにもそれぞれ
ウイルスが発見されており、
ウイルスの起源は古いことが示唆されている。細菌に感染する
ウイルスはバクテリオファージと呼ばれ、分子生物学の初期に遺伝子発現研究のモデル系として盛んに用いられた。しかし、今日の分子生物学・医学の分野では「
ウイルス」という表現は動植物に感染するものを指して用いることが多く、細菌に感染するバクテリオファージとは区別して用いることが多い。
Virus はラテン語で「毒」を意味する語であり、古代ギリシアのヒポクラテスは病気を引き起こす毒という意味でこの言葉を用いている。
ウイルスは日本では最初、日本細菌学会によって「病毒」と呼ばれていた。1953年に日本
ウイルス学会が設立され、本来のラテン語発音に近い「
ウイルス」という表記が採用された。その後、日本医学会がドイツ語発音に由来する「ビールス」を用いたため混乱があったものの、現在は一般的に「
ウイルス」と呼ばれている(「日本
ウイルス学会が1965年に日本新聞協会に働きかけたことによって生物学や医学分野、新聞などで正式に用いる際は、
ウイルスと表記するよう定められている。」という説もあるが定かではない)。また、園芸分野では植物寄生性の
ウイルスを英語発音に由来する「バイラス」の表記を用いることが今でも盛んである。